2017年01月16日

たものですから

その表情はいつも笑っていた。
(笑っていたばか蘇家興
りじゃないのにね…。)
不思議なもので思い出は綺麗に見えるのかもしれない。
(綺麗なところだけしか思い出せないのは、思い出したくないから?)
水平線を見つめながら、静かに涙を流す。
早雪にとってのこの1年半は、とても過酷だった。
仕事に打ち込む事で忘れようとしていたが、なかなか思うようにはいかない。ふとした時に思い出し、こうして心の奥底に溜め込んだストレスがあふれて来るのだ。
ふと気づくと、大分暗くなって来ていた。
ぼんやりと水平線に沈む夕日を見つめていると、不意にハンカチが差し出される。
驚いて受け取り、隣を見ると困った顔をした貴彰が座っていた。
…!」
そんなに驚かないでください?」
す、すみません…」
ハンカチで涙をぬぐいながら、早雪は顔を背ける。
港周辺を歩いていたらあなたがいたものですから…。声をかけようか、見て見ぬ振りをするべきか迷ったんですが…」
貴彰の気遣いに申し訳なくなりながら早雪は静かにその落ち着いた声に耳を傾ける。
なんだか、とても寂しそう蘇家興
な横顔で…、目が離せなくなってしまいました」
少し冗談めかして言われ、早雪はまだ目に涙を溜めたまま笑った。
ご心配おかけしてすみません。でも大丈夫ですから…」
そう…ですか?」
貴彰はそっと早雪の頬に触れる。
硬直した早雪だが、彼が頬につたった涙をぬぐってくれたのだと気づいた。
(なんかこの前もこんな事があったような…)
ぼんやりと思い出しながら、栄太の顔が浮かぶ。
彼もとても
心配してくれていた。
早雪さん」
貴彰が優しく早雪を呼び、彼の言葉を待つようにじっと彼を見つめた。



Posted by 私だけが残った貧乏作業だ at 17:41│Comments(0)
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

QRコード
QRCODE
庄内・村山・新庄・置賜の情報はコチラ!

山形情報ガイド・んだ!ブログ

アクセスカウンタ
読者登録
メールアドレスを入力して登録する事で、このブログの新着エントリーをメールでお届けいたします。解除は→こちら
現在の読者数 0人
プロフィール
私だけが残った貧乏作業だ