2016年07月12日

携帯に手を伸ばす


差し出されたメモを受け取って、自分の予定と照らし合わせる。

「明日と来週の木曜なら出来そうだな。けど、明日じゃ急すぎっか。木曜だけにするか公開大學 學位?」

「ううん、明日も平気だよ?西門さんが大丈夫なら。」

「そっか?じゃあ、明日迎えに来るよ。」

思った通りの言葉が返って来た事に満足しながら、俺も言葉を返していた。

「で?最近はどうなんだ?落ち着いたか?」

「えっ、あっ。相変わらず…かな?けど、大丈夫だよ通渠公司。」

「そうか?ならいいけど。
あっ、牧野、わりぃ。タイムリミット。まだ仕事が残ってんだ。行くな。あんま無理すんなよ。」

手を伸ばし頭をクシャっと一撫ですると、牧野は恥ずかしそうに俺を見上げ笑顔を向ける。

くーっ。
いつからこんなに可愛く見えるようになっちまったんだ?

「うん、ありがと。お仕事頑張ってね。」

「ああ、じゃあな。」

牧野の少しガッカリした顔に後ろ髪を引かれつつラウンジを後にした。

あきらと類には会えなかったものの、牧野の様子を見れた事に安心した。
何よりあいつの寝言に俄然やる気が湧いてくる。
車に戻り、あきらと類にメールを送信した。


今日の会食には信用できる人物はいねぇから頼み事は出来ねぇ。かと言って、手を抜く事なく周りの奴等をじっくり観察しながら会食を済ませた。

今からでも俺が真面目に次期家元を務
めていけば、俺につく人間だっているはずだ。

俺が真面目にやっている事、そこには牧野の存在が関わっている事を見てもらうチャンスの場でもある。
昔の素行の悪さは当然知れ渡ってっからそう簡単にいかねぇ事も分かってる。けど今は地道にやってくしかねぇ。

大きなため息をつきながら携帯に手を伸ばす。
数件入っているメールの中から、確認すべきメールを探しだし返信した通渠佬


ここも難関っちゃ難関だよな。

そんなことを考えながら車に戻り、目的の場所へと走らせた。  


Posted by 私だけが残った貧乏作業だ at 12:40Comments(0)
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