2017年02月28日

関係を絶ちたいとい

何も反応しない葉月を見て、ザンはリビングの椅子に座った。
東京に帰らない方がいいと思う?」
ああ。危険だ。敦はお前の身を案じているんだろう。」
一段落したら、刑事を辞めるって」
え?」
東雨宮と関わりたくないから、一人になるって」
そうか」
どう思う?」
葉月が振り返るとザンは静かにこちらを見ていた。

ザンは何も言わない。
葉月も何も言えなかった。
ごめん、ちょっと一人になってもいい?」
別荘からは出るな」
うん。ザンは帰ってもいいんだよ?」
いや、ここにいる。何かあれば呼べ」
ザンは言いながら自分の胸から下げたホイッスルを再び葉月の首に掛ける。
泣きそうになりながら見上げたザンもまた、とても悲しげだった。
おやすみなさい」
葉月はやっとそれだけ告げると、階段を駆け上がった。
前にもこんなことがあった気がする。今は一人で気が済むまで泣きたい。
きっと敦は気づいていたのだろう。
葉月が未だザンを忘れられていない事を。
(離婚するって言われても仕方ないよね)
ザンのことだけに関わらず、東雨宮との関係を絶ちたいという敦の気持ちもよく分かる。
12年前に狂わされた運命を、明日終らせて自由になりたいと言うなら、止める事はできないと思った。
むしろ、約束を守り迎えに来てくれ、結婚して、カナンまで迎えに来てくれた。
それなのに葉月は他の人に恋をしていた。よく今まで我慢してくれていたと思う。
本当に、敦の器の大きさ、心の広さには何度も驚かされ、救われて来た。
(こんなに敦を好きなのに、どうしてザンを忘れられないんだろう。)
今更ザンとどうにか激光脫毛中心
なりたいというわけではない。
だが、まっすぐに敦だけを想えないもどかしさと、申し訳なさはいつまでもつきまとった。
まさかこんな形で、電話で終わりを告げられるとは思っていなかった。
葉月はベッドにもぐりこみ、声を殺して泣いた。
泣き続けて、喉や目が痛くなったが、涙は一向に止まる気配がないまま、朝が訪れようとしていた。



Posted by 私だけが残った貧乏作業だ at 16:43│Comments(0)
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